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“働き方改革”の第一歩は「何が無駄なのか?」を見つけること

「PDCAをしっかり回すように!ウチの幹部クラスの連中に対しては約3年位言い続けているんだけれども、なかなか浸透しないんですよ。PDCAにおいては第一人者だと聞いていますので手伝ってもらえませんか?」
今年発売になった「LEADER’s LAMDA」を読んでいただいた売上規模約100億円の専門商社A社の会長からこんな電話をもらいました。
まずは、基本的な考え方を学んでいただきながら、PDCAに関して共通の理解をしてもらおうと幹部全員を集めていただいて研修を実施しました。
各部門の課長以上の役職の方々、および30拠点ある営業所長ということで、総勢50名位の研修になったのですが、今回お伝えしたいのはこの研修の場で起きた出来事です。

創業者でもある会長の鶴の一声で急遽(といっても一ヶ月後位の猶予があり)開催されることになった研修ではありますが、5~6名の営業所長は午前中外せない予定があるために午後からの受講であったり、9時スタートだったのですが、9時をやや回ったタイミングで数名が駆け込んできたりと、私からすると疑問符だらけのスタートとなりました。
20年以上もコンサルタントという仕事をやってきたおかげで、いろいろなタイプの会社を見させてもらってきたわけですが、いわゆる基本的な躾のなっていない会社、A社の事象で言えば「トップの方針に則った行動ができていない」、「決められた時間にスタートできない」ようなことが見過ごされている会社の業績が上がるはずがないのです。
A社の場合、売上100億円位は上げていると言いながら、ここ数年の営業利益率は0.2~0.5%と何とか赤字を出さずにやっているレベルですが、この状態が大きく好転するようなことは到底考えられないということです。

この日は、9時~18時まで丸一日時間をもらって研修したのですが、疑問符はスタート時だけではなく、その後もやはり出てきます。
まず、ホワイトボードのマーカーです。
途中で補足説明をする際にホワイトボードを使用したのですが、いざ書こうとするとそれはすでに使えない(インクの切れた)マーカーでした。「おっと、これはもう切れてますね」と言いながら、別のマーカーを使おうとするとそれも使えない。結局、5本ほど置いてあったマーカーは全て使えない状態だったため、新しいマーカーを持ってきてもらいました。
本コラムを読んでいただいている皆さんのなかで、「あー、そんなことなら自分の会社でも結構ありますよね」などと思っているかたが仮にいるようならば、「あなたの会社も今以上に儲かるようになど絶対になりませんよ」とお伝えしておきます。
A社の幹部研修には、約50名の幹部が集まっていて、書けないマーカーを書けるマーカーに交換するまでのおよそ3分間、これがまったく無駄な時間だったわけです。たかが3分と思われているかも知れませんが、50名いればそのマイナスインパクトは150分です。
それを無駄だと感じない風土の会社が、今以上儲かるはずなどあるはずがない、というのが数多くの会社をみてきた私の率直な感想です。

会長には、まず「PDCA以前に5Sからですね」とお伝えしました。
最近はさかんに“働き方改革”というキーワードが飛び交っていますが、多くの方々からこんな声を聞いています。
「今まで2~3時間の残業でやっとこなしてきた仕事なのに、定時なんかで帰れるわけがない」
「定時に帰らなきゃいけないから仕事を家に持ち帰っていますが、会社にとっては残業代が削減されるからラッキーですよね」
「とりあえず、これまで1時間とっていた昼休みをなるべくとらずに乗り切っています」
などなど、、、わかってはいるでしょうが、すべて正解とは程遠いです。

そして、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)に関しても、そこで働いている社員個々人に努力してもらうこと、のように誤解しているかたが少なくありません。

例えば、今回のホワイトボードマーカーに関しては、「マーカーが書けなくなった時点で必ず捨てて、新しいマーカーを補充する」というルールを徹底するだけですが、より大切なのは「どんな状態だとこのマーカーは書けなくなった」と判断するのかを会社全体の共通認識としなければ、結局徹底はされません。
たかがマーカーの話に聞こえるかも知れませんが、これが徹底されている会社では、組織的にいろいろなことが徹底される仕組みができているはずだということです。

会社にはまだまだ無駄な時間だらけだということを再認識すべきですね。