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なぜ多くの会社でPDCAが回らないのか?

ここ数年の間、「PDCAを組織に定着させたい」といった要望を受けてのコンサルティング依頼は、以前とは比較にならないほど増えてきました。そのなかで、「まじめに取り組んでいるにも関わらず、PDCAがうまく回らない」と感じている数多くの中堅幹部の方々が、PDCAマネジメントのどこで躓いてしまうのかといった実態をお伝えしていきます。

[目次]

多くの人は、PDCAのスタートで躓いている

ここ数年のPDCAコンサルティングを振り返ると、あらためて気づいたことがあります。それは、多くの人がPDCAのスタートで躓いてしまっているということです。皆さんの会社で「マネジメントの基本としてPDCAをしっかり回そう」といった方針が経営陣より示された際に、中堅幹部の方はそれをどのように理解をして取り組むでしょうか。

私のクライアント先で最も多く見られたのが、「今までやってきた業務内容をPDCAのフォーマットに上手く当て嵌めて管理を徹底しよう」というパターンです。「それのどこが間違っているの?」と感想を持つかたもたくさんいるのではないでしょうか。

「現在の仕事のやり方・進め方に関しては何の問題もなく、現場のマネジメントに携わっている管理職がしっかり管理さえできるようになれば、成果は出る」そういった状況では、「業務内容をPDCAに当て嵌める」だけで良いのかも知れません。しかし、今までと同じように仕事を進めることで、本当に成果は出るのでしょうか?

”現在の仕事のやり方・進め方”を変えなければ、新たな成果は生み出せない

今までよりも高い売上や利益を成果として求めているのであれば、今までと同じ仕事のやり方・進め方でその成果は出せないと考える方が自然でしょう。また、今まで出せていた売上・利益を継続して出す場合も、今までと同じように仕事を進めることでその成果を出せるとは限らないというのが現実ではないでしょうか。

昨今のコロナによる経済停滞や、歴史上類をみない円安による物価の影響などを考えると、変化しない(今までと同じように仕事を進める)ことは、衰退につながるといっても決して言い過ぎではないわけです。PDCAを回していくためには、まずは、「PDCAは変化を起こすマネジメント手法である」という意識でスタート時点に立っことが必要になります。

変化を起こす視点1 チャレンジングかつ明確な目標(ゴール)を設定する

それでは、“変化”を起こすためには何を考えていく必要があるのでしょうか。

1つは、チャレンジングかつ明確な目標(ゴール)を設定することです。
「これだけPDCA」などの書籍の中では、このことをエベレスト登山に例えたりしていますが、「今のままでは到底到達しそうにないけれども、そこに是が非でも到達したい」というチャレンジングな思いがあれば、人はその為の計画を作り込みます。

また、多くの方が経験されている“受験”などが身近でわかりやすいかも知れません。目標(ゴール)は、今のままでは到底無理なレベルの大学への合格で、是が非でも達成したいとすると、計画は受験日からの逆算で作り込みますよね。「とりあえず、とにかくどんどん勉強するんだ」などと無計画のまま実行にはいかないでしょう。

これが目標(ゴール)に向かって必然的に変化が起こるパターンです。ただし、最も重要な「勉強する時間」を最大化するためには、「遊ぶ時間」を減らす、「睡眠時間」を削る、といったように、時間配分の方針を明確にすることです。ビジネスの場合で考えると「新たに取り組むこと」と「これまで取り組んできたこと」の時間配分の方針を明確にする必要があります。

変化を起こす視点2 現在の問題を明らかにした上で“あるべき姿”(ゴール)を設定する

もう一つの視点は、現在の問題を明らかにした上で“あるべき姿”(ゴール)を設定することです。
そのためのアプローチは、まず「“何”を変えるのか」(スタート)を明らかにした上で、「“何”に変えるのか」(ゴール)を導き出すことになります。

このような説明をすると、「つまり通常の問題解決のアプローチになるのだから、そんなに難しい話ではありませんね」と、このように考える人もいるのではないでしょうか。
ただ、我々がコンサルティングの現場でよくみるのは、下記のケースが散見されます。

「経験の浅い営業マンの生産性が低い」→「だから鍛えるべきだ」、「だから配置転換だ」
「間接部門の人件費が増えている」→「だから人員削減だ」、「だから残業の禁止だ」

これらのように、断片的に問題を捉えて対策を打っても、得られる効果は限定的になってしまいますし、せっかく打った対策が、別の問題を引き起こすきっかけにならないとも限りません。会社が大きければ大きいほど、より効率的に仕事を回すべく組織の役割分担が進んでおり、各部門がそれぞれの立場と視点でのみ問題を捉えようとしても自ずと限界があるわけです。

だからこそ、組織全体という視点で「“何”を変えるのか」を明らかにするためには、各部門のキーマンが一同に集って「組織が晒されているあらゆる問題を網羅的に捉えた上で、それらの問題を因果関係で構造化する」という作業を尽くすことが必要不可欠になります。

まとめ

「PDCAが回らない」原因をお伝えしてきましたが、PDCAの大前提は、変化を起こすマネジメント手法であるということです。そのために、Pの段階でチャレンジングかつ明確な目標(ゴール)を設定することと、現在の問題を明らかにした上で“あるべき姿”(ゴール)を設定するといった視点を取り入れてみてください。