こんにちは、D課長です!
弊社のコンサルティングにおいては、【戦略構築】→【実行戦略策定】→【戦略の展開】→【戦略の定着】の各フェーズに関わる責任者をきめ細かくサポートすることを大切にしています。
なかでも【実行戦略策定】フェーズは特に評価をいただいているポイントだと思いますが、このフェーズにおける成否の分かれ目になってくるのが“人と組織”に関する具体的な施策です。
そこで、この記事では、”組織力強化”を目指している企業が、陥ってしまいがちな失敗について解説していきます!
この記事は、次のような人におすすめです!
・組織力強化のために、いろいろ試しているが上手くいかない
・戦略を浸透させたいが、いつも決めたことがとん挫してしまう
・経営陣から組織力UPに取り組むように言われたが、何から始めればよいかわからない
この記事を読んで、組織力強化の考え方について理解し、企業の組織強化に活かしていきましょう!
それではどうぞ!
目次
- “組織力強化”の位置づけにおける失敗
- “組織力強化”に向けた施策の落とし込みにおける失敗
- OBの施策を優先的に取り組むべき
- なぜ、最も重要なテーマである”コミュニケーション”施策は進まないのか?
- 「1対複数」だけでなく、「1対少数」のコミュニケーションの場を設ける
- 認識ギャップを埋めるための都度確認
- まとめ
“組織力強化”の位置づけにおける失敗
ひとつは、企業戦略における“組織力強化”の位置づけです。
アルフレッド・チャンドラーの著書『組織は戦略に従う』を前提に考えるのが、本来あるべき姿だと思います。
過去の歴史から、組織のマネジメントに当たる人々は、大きな危機に直面しないかぎり、日々の業務の進め方や権限の所在を変えることはまずない
アリフレッド・チャンドラー フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
市場の動向によっても様々な組織のあり方がありえるのであり、経営者は適切な情報と手段をもって企業組織を体系化する必要がある
業績を上げるためのマーケティング戦略がまず先にあり、それをどのような体制(組織)で実行していくのかという意味でマネジメント戦略がサポートしているという枠組みです。
この考え方に関しては多くの方が理解していただいていると思いますが、いざ“組織力強化”というテーマを課せられた段階においては、どうしても視野が狭くなってしまう傾向にあるようです。
「上司と部下のコミュニケーションに問題があるから、まず上司にコーチングを習得させるべきだ」
「営業と開発、営業と生産といった部門間の壁が障害になっているから、合同の会議を増やすべきだ、また、部門間の人事交流も図るべきだ」
「優秀な人材のモチベーションを上げるために、成果主義を導入するべきだ」
等々、各々が気になっている問題に対する対処に議論が集中してしまい、自社の問題の全体像を理解した上で、施策の優先順位を決定するといった基本的なポイントを蔑ろにしてしまうのです。
“組織力強化”に向けた施策の落とし込みにおける失敗
もうひとつは、“組織力強化”に向けた施策の落とし込みです。
必要不可欠な要素として、一般的には、『HRM』(Human Resource Management:人的資源管理)と『OB(Organizational Behavior:組織行動)があります。
HRM (人的資源管理) | Human Resource Management | 人材を経営資源として捉え、有効活用するための仕組みを体系的に構築・運用すること |
OB (組織行動) | Organizational Behavior | 企業組織の生産性や業績に影響を及ぼす個人行動や、集団行動、そして組織そのものの行動のこと |
『HRM』には、人材の採用や教育、給与体系や評価制度等、『OB』には、モチベーションやコミュニケーション、リーダーシップといったテーマが当てはまります。
このように整理すると、『HRM』と『OB』は、“組織力強化”を具現化するための両輪として考えるべきものだということが理解できると思いますが、特に『OB』に関しては、管理しづらいという特徴があるため、深く議論されることがないまま『HRM』関連の施策のみを先行させてしまうケースが非常に多いのです。
これまでも、強い組織を標榜するいくつかの企業に対してベンチマークをしてきましたが、目に見えやすい『HRM』だけを真似てみたところで、期待した効果を得ることはかなり難しいことだと思われます。
本当にベンチマークすべきポイントは
・その企業の社員の仕事に対するモチベーションを支えている要素は何か
・どのようなリーダーシップが発揮されていて、それを可能にしている仕組みは何か
といった『HRM』と『OB』を上手くまわすようにデザインされた施策の全体像であり、それを自社に置き換える場合のポイントを考え抜くことだと言えるでしょう。
OBの施策を優先的に取り組むべき
基本的な考え方は、「『HRM』を効果的に運用するための『OB』」であり、「『OB』を引き出すための『HRM』」であること、これを念頭において設計することが大切です。
ただし、これにとらわれすぎて組織変革に向けたアクションが進まないのでは本末転倒です。
そのような場合は、まず『OB』に関するアクションを進めていくことです。
なかでも、“コミュニケーション”に関しては、すでに問題が顕在化しているケースが多いので、優先的に取り組むべきだと思います。
“コミュニケーション”は、戦略を現場に浸透させるために、上下(幹部と部下)の認識の共有化のために、あるいは横(部門間)の連携強化のために、最も重要なテーマであることは言うまでもないでしょう。
ただし、そういったことを重々理解している企業においても、なかなかベストな状況を作り出せていないのも事実です。
なぜ、最も重要なテーマである”コミュニケーション”施策は進まないのか?
理由のひとつとしては、
“コミュニケーション”を会議体の設置といった施策の展開にとどまってしまっていることがあるでしょう。
戦略を現場に浸透させることを目的とした「幹部会議」の設置、幹部と部下の認識共有を目的とした「部門会議」の設置等々、仕組みだけは整えるのですが、本来の目的は果たせずに連絡事項の伝達で終わってしまっているようなケースが散見されます。
多くの企業がこのような状況に陥ってしまっている結果、上手な会議のやり方のような本が売れたりするのだと思いますが、問題は会議のやり方なのでしょうか?
「会議」という形式をとる場合、会議の主催者である社長対複数の幹部、あるいは部長対複数の部下という【場】の設定になり、その場合にできうる“コミュニケーション”は限定的になることを理解する必要があります。
「1対複数」だけでなく、「1対少数」のコミュニケーションの場を設ける
即ち、戦略を現場に浸透させることを目的と考える場合、企業全体の仕組みとしての「会議」だけでは明らかに不足しており、合わせて【1対1】あるいは【1対少数】の“コミュニケーション”の【場】を意識的に設けることが必要だということです。
こういった【場】で、戦略に対する理解度の確認や、それを実現するための具体的なアクションについての認識を深めていくことが本来の目的を達成することにつながるのです。
認識ギャップを埋めるための都度確認
“コミュニケーション”の必要性に対する認識のズレも見逃せません。
「さすがにこのことについて部下は理解しているだろう」と考えるタイプと「徹底的に確認しなければ部下との認識ギャップは埋まらない」と考えるタイプでは圧倒的に前者が多いように思いますが、原則としては後者のタイプの考え方に立つことが必要だと思います。
「クライアント先にヒアリングにいった後に部下の作成した議事録のポイントがずれている」
「同じ本を読んだのに注目しているポイントが違う」
というように、同じものを見たり聞いたりしているのに理解度が全く異なっていたという経験はある方も決して少なくはないと思われます。これまでに習得してきた知識も違えば経験も異なるのですから、これはある意味当然のことだと考えなければいけません。
そう考えれば、
「クライアントはこう言ってたけど、君はどう考えた?
「この本について自分はこういう感想を持ったけど、君の感想は?」
という具合に、その都度の“コミュニケーション”を常識としてとっていくことは不可欠だと思います。
まとめ
“コミュニケーション”において重要な「仕組み以外の【場】に対する意識」および「常識化させるべき都度都度の確認」は、『HRM』と『OB』を定着化させる段階で大きな武器になりますので、あらためてチェックしてみてはいかがでしょうか。
2012年の「これだけ!PDCA」(すばる舎リンケージ)を皮切りに、2014年「PDCAが面白いほどできる本」(KADOKAWA)、2016年「PDCAの教科書」(マイナビ)、2017年「マンガでやさしくわかるPDCA」(日本能率協会マネジメントセンター)、2018年はPDCAをテーマとした5冊目の本として「最強のPDCA」(ナツメ社)を出版。
「PDCAを回せる組織はすべからく成長できる」という持論のもとに作り上げた『PDCA浸透プログラム』は、「PDCAを回せない」個々の企業がそれぞれ抱えている問題の本質に正確に切り込んでいくプロセスを特長としており、企業規模、業種業態を問わず、様々な企業に採用されている。